長編官能小説
by Mr.Peach
『女教師冴子−放課後の密室3【鳳凰編】』
【前回までのあらすじ】
暴力団養成所の異名を取る岩城十二工校を牛耳る鮫島直斗(広域暴力団「一心会」組長、鮫島剛毅の長男)を就任初日に叩きのめし、わずか一時間ほどで平定してしまったかに思われた、更正屋、一条冴子。鮫島剛毅が学校に乗り込んで来るが、冴子の姿を見るや、ひれ伏してしまった。日本有数の暴力団組長が真っ青になり「お嬢様」とおののく冴子の正体は、政界から裏組織全てを操る三友グループ総帥、武神道山(たけがみどうざん)の孫娘であったのだ。冴子の真の目的、それは21世紀の世界的規模の経済戦争を勝ち抜くための戦士の育成。それも実弾と呼ばれる実力行使を担う部隊の構成員を全国から駆り集める事であったのだ。実質2日間でこの学校も手中に収めた冴子であったが、校長の宮川の謀略が冴子を落とし入れた。冴子を呼び出す宮川。冴子から見れば虫けら以下のこの男に警戒心を見せる要素はなかった。しかし、宮川にうながされ、冴子が立ち止まった場所。そこは土俵だった。岩城工高相撲部。全国大会常勝チームの神聖なる土俵に女が上がった。それはあらゆる武道に精通する冴子をもってしても、死を意味する行為だったのである。冴子と宮川の抗争は日本相撲協会をも巻き
込み、街は半壊する。ナイスバデーの美女に対する劣等感の塊、宮川は暗黒のフォースを開放し、自らの体を制御できない怪物と化し、戦闘領域は亜空間に移行、激闘の最中、近藤が絶命、そして冴子に角界の頂点、横綱周防灘の必殺技、南斗水鳥拳スワンレイク百烈スリーピングビューティが炸裂した!
「そこまでね、宮川校長。」
そこに立っていたのは冴子であった。
「ば、バカな。お前はさっきの周防灘の百烈張り手で砕け散ったはず!」
「ブルジョアを甘く見ないことね。私の体は義体なの。私のゴーストを消滅させない限り、私は不死身なのよ。」
「ぐ・・・・」
まだ細胞分裂の進む宮川の体は今、この瞬間も膨らみ続けていた。
「しかし一条先生。あなたのあらゆる攻撃は私の率いるおすもうさんには全く歯が立たないことに変わりは無い。あなたが何度復活しようが、おすもうさんを倒さない限り、私を止める事はできないのではないのか?ぐうっふっふっふ」
宮川の言葉は口腔内まで激変している為、はっきりと聞き取れるものではなかった。しかしその意味はテレパシーで伝わってきた。
冴子は無言で宮川を見据える。そして宮川の両脇をがっちりと固める幕内力士たち。冴子の力ではどうしようもないのか。
その時、冴子の足首をぎゅっと握り締める手があった。
鮫島直斗だった。
時枝山のぶちかましをまともに食らい、虫の息である。
「せ、先生・・・・」
「鮫島君・・・・」
冴子はしゃがみこみ、直斗をその腕に抱き抱えた。
「先生・・・おれ」
「鮫島君、喋っちゃだめ。大人しく横になってなきゃ」
「おれ・・・金バッジもらえるかなあ」
それが直斗の最期の言葉になった。
力士軍団を打ち破る為に一心会が送り込んだ組員五千人を操った言葉、金バッジ。その五千人と共に直斗もまた帰らぬ人となった。直斗が金バッジに執着する理由はない。脳神経がやられていたのだろう。
冴子はそっと、その右手で直斗のまぶたを閉じてやった。
「宮川校長」
「何かね、一条君。君は美しい。その死体は剥製にして私の書斎に飾ってやろう、ぐふふふふ」
冴子は一度うつむき、そして顔を上げ、宮川をもう一度見据えた。
「校長はオセロというゲームはご存知ですか」
「私は完璧だ。世界中の女は私のものなのだ」
「たった一手でガラリと局面が変わるオセロ。その一手をお見せしましょう」
「安心しろ。君は極上品だ。いつも私の傍らに置いてやるから感謝したまえ」
宮川を支配する暗黒フォースが精神面を犯しだしていた。時間がない。
「校長!」
冴子が叫んだ。
一瞬、宮川の自意識が引き戻された。
「私が義体であるという事はお話しましたね?」
「何度でも屠ってやるさ、一条君」
「それではお聞きします」
冴子が静かに続けた。
「私は本当に女だと思いますか?」
「!」
「今回の騒動のきっかけは、私が女人禁制の土俵に上がった事から始まりました。しかし、私が女であると言う証拠はどこにもありませんわ」
「ぐふう・・・」
宮川のうなり声を、相撲部員の怒声がさえぎった。
「冴子せんせーーーい!」
「自分らが、自分らが間違ってたでごんす!」
「悪いのは全部校長でごんす!」
宮川の体色が青に変化しだした。
「先輩方、自分らは騙されていたでごんす!」
宮川が逃走を始めた。
相撲部員に続き、幕内力士達も宮川を追い始めた。
「チェックメイト、ね」
冴子がつぶやいた。
宮川が最後の力を振り絞り暗黒魔法を唱える。
ワープゲートが開き、宮川の巨体が異世界に吸い込まれていった。続いて相撲部員、幕内力士全員がワープゲートに吸い込まれた。
1平方センチメートルの空間に総勢500トンの肉槐が詰め込まれたのだ。
−放課後の密室。それは汗と脂肪が凝り固まる、一種のブラックホールと化していた。
「冴子先生」
上田鉄也が冴子に歩み寄る。
「大丈夫ですか?」
「さすがに今回ばかりは、私も疲れたわ」
夕焼け空が校舎を紅く染め抜いていた。
「先生、これからどうされるのですか?」
上田鉄也の目には涙が光っていた。少年の心は冴子に釘付けだった。
「腹心の近藤を失ったのは大きな痛手。私はあらゆる武道を極めたつもりだったけど、すもうは奥が深いわ。女の体では太刀打ちできないわね」
「先生・・・」
「この前の騒ぎの後ね、水戸泉関の義体を手に入れたの」
「せ、先生」
「私は相撲を極めてみるわ」
少年の初恋はとても苦いものとなった。
−完−