長編官能小説
by Mr.Peach
『女教師冴子−放課後の密室2【中編】』
【前編あらすじ】
暴力団幹部の息子など荒くれ者が通う地域一番の荒廃校、岩城第十二工業高等学校。人生の落伍者や裏街道のエリートの卵たちを更正するプロ中のプロ、一条冴子が赴任してきた。それまでのルールを粉みじんにされて黙っている生徒たちではない。今、生徒と冴子の抗争が激化する。
「ねえ、冴子先生。ホームルームの前にオレに特別授業してくれよ?」
冴子の尻を撫で回しながら、生徒のもう片方の手が冴子の形のよい胸に伸びた。
冴子はその手を振り解きもせず、手に嵌めた黒のレザーグローブをキュっと嵌めなおした。
「君はどこのクラス?授業はもう始まっているわ。教室に戻りなさい。」
生徒が冴子の黒い瞳をじっと見据える。
「この場で特別授業始めてもらってもいいんだぜ、なあ?」
その手が冴子の胸元に割って入った。
建築科2組の教室内では、一部の生徒から冴子の情報が流され始めていた。
「マジだって。さっき倉戸が言ってたんだよ。倉戸だけじゃねえって。何人ものやつらが銃声を聞いてるんだぜ」
「で、その銃声と今度の新米先生とどう関係があるんだよ鉄也」
「だから、倉戸が言うにはその派手な赤いスポーツカーに電気科の沢口たちが近寄ってったら、いきなりゴツイ兄ちゃんが拳銃ぶっ放したってことらしいんだ」
「その派手なスポーツカーが新米のクルマって証拠あんのか?」
「おお、なんかおれも聞いたよ!その話。おれが聞いた話だと拳銃じゃなくて日本刀だって話だ。なんか化学科の1年坊が切り殺されたって話だぜ」
「ぎゃはははは!死んだのか1年坊!なわけねーだろ!」
その時、突然教室のガラスがけたたましい音を立てて粉々に砕け散った。窓際にいた数人の生徒がまともにガラスの破片を浴びた。
「ぐああああ!」
ガラスを割って侵入してきたのは、先ほど冴子にからんでいた生徒であった。
「た、谷!」
冴子にからんでいた生徒−谷は背中から教室に入ってきた。そう、正確には教室に叩き入れられたのである。谷は宙に浮いていた。谷の喉を冴子の皮グローブががっちりと掴んでいた。冴子は片手一本で体重が70kgはあろうかという男を掴み上げていたのだ。谷は後頭部から窓ガラスに叩きつけられ、おびただしい量の流血であった。冴子はそのまま引き戻し、谷を廊下に転がした。
「この子はどこのクラスかな?」
涼しい顔で冴子が近くにいた生徒に微笑みかけた。
「て、てめえ!
ふふふ、ふざけんなオルァ!」
冴子に殴りかかってきたその生徒の顔面に冴子の裏拳がめり込んだ。
「がふう!」
周囲の生徒たちに緊張が走った。
それぞれ喧嘩馴れしているだけに、むやみに冴子に襲いかかる者はいなかった。今の一瞬の攻防から、冴子が只者ではないことを理解したのである。ただ、その実力は掴めない。
微妙に間合いを取りながら冴子を数人の生徒が取り囲む形になった。
冴子は動ずることなく言い放った。
「私は今日からこの3年建築科2組の担任になった一条です。さあ、授業は始まっているわ。みんなそれぞれの教室に戻りなさい!」
冴子を囲む生徒たちが目配せをする。
「おい、上田ァー。ちょっと木刀貸せや」
先ほど教室内で冴子の情報を伝えていた上田鉄也が小間使いのように走らされた。
各々が武装を始めた。メリケンサック、バタフライナイフ、木刀、チェーン、禍禍しい空気が支配し始めていた。
「おうコラ先公。お前ここがどこだかわかってんか?」
冴子は無言でその生徒を見据えた。
「そのかわいい顔がずたずたになっても知らねえぞ。どうする?」
冴子は表情ひとつ変えない。
「このままここでくたばるか。ケツ突き出して輪わされるか。どっちか選びな。」
冴子は少し首をかしげ、くすっと微笑んだ。
「もう一度言うわ。教室に戻って授業を受けなさい。」
「なめんなこのアマァー!」
木刀で突きかかった。
瞬間、そこに冴子の姿はなかった。
ふわり、と宙に舞うと木刀の突きを軽々と飛び越え、リーダー格の少年の前に降り立ったのだ。
「!」
冴子は魔性のスピードで少年の腕を取ると、後ろに回りこみ、少年の右腕を極めていた。
「いぎいぃぃぃっ!」
「鮫島さん!」
リーダー格の少年−鮫島直斗は広域暴力団「一心会」の組長、鮫島剛毅の長男であった。
「テメエ!シャレなってねえぞ!」
「放せゴルァ!」
少年たちはリーダーを取られ慌てふためいた。
その時、爆音を立てて一台のバイクが走り寄って来た。彼も鮫島直斗の配下だったのだ。
冴子はバイクのほうに背を向けていた。真後ろから冴子を襲うバイク。その刹那、近藤が割って入った。
ギャン!
鋭い金属音が鳴り、バイクが転倒した。
「ぎゃあああああああっ!」
バイクの少年の右腕が叩き落されていた。
「ああ・・・近藤が出てくるとは・・・ちょっと予定外だったわね」
冴子が緊張の欠片も無い声で天を仰いだ。
「鮫島・・・って言ったわね。君、もしかして一心会の鮫島さんと関係あるの?」
冴子が極めていた腕を放した。
「なんだテメエ?」
「鮫島剛毅・・・あなたのお父さんかしら?」
直斗がすさまじい目で冴子を睨みつけた。それはまだ10代の少年のものとは思えないほどの迫力を持っていた。とは言え冴子には全く通じた風ではない。
−何者か?−
直斗は図りかねていた。
「近藤、その子を直ちに病院に運びなさい。今ならまだ腕はくっつくでしょう。」
少年を抱き起こしつつ、携帯電話でどこかに連絡を入れ始めた。無防備になった冴子の隙を直斗は見逃さなかった。冴子の襟首に向かって直斗の腕が伸びた瞬間、直斗はすさまじい力で引き戻された。
「ぐふう!」
高岩だった。高岩が直斗の襟首を掴んで引き倒したのである。
「一心会の坊主ごときが、お嬢さんに手をかけるたあ、何事じゃ!」
高岩の岩のようなパンチが直斗に降り注いだ。
「もういいわ、その辺で放しなさい」
高岩が攻撃の手を休めると、ボロ雑巾のように血まみれになった直斗が倒れていた。その場にいた生徒の誰もが凍りついた。それほどに鮫島直斗はこの学校で絶対だったのである。
「あーあ、やり過ぎよ高岩。相変わらず加減のできないうすのろね」
「申し訳ありません、お嬢さん」
「近藤、チャーターにもう一人追加して。こっちのほうが重傷だわ。」
バイクの少年に応急処置を施し、落ちた右腕を拾いながら近藤がてきぱきと動いた。
冴子が改めて周囲を見渡し、言い放った。
「さあみんな、授業に戻りなさい!」
−続く−